bonotakeの日記

ソフトウェア工学系研究者 → AIエンジニア → スクラムマスター・アジャイルコーチ

転職しますの記

このブログ記事はいわゆる転職ブログです。昨日3/16が現職の最終出社日だったので、公開するものです。

ただし、よくある転職ブログのように、元職場や新しい職場を大きく取り上げて評価することを意図したものではありません。

僕は転職活動をするのがこれで3回目になるのですが、今回は転職活動そのものがめちゃめちゃ面白く、ものすごく得るものが多かったので、その体験のうち公開できそうなところだけをとりあえず書き残そうという試みです。ちなみに長いです。

目次

どこに転職するの

そんなんどうでもいいからどこに転職するの、という人向けに先に書いておくと、4月からUbieで正社員として、プロダクト開発エンジニアとして働くことになりました。

現職のIdeinは今月いっぱいで正社員ではなくなるものの、4月から業務委託で、アジャイルコーチとして引き続きお世話になります。

また、先行して2月からmatsuri technologiesにてやはりアジャイルコーチを業務委託で引き受けており、アジャイル導入の支援と開発組織づくりのお手伝いをしています。

要するに、本業エンジニアやりつつ、副業でアジャイルコーチをやっていきます。

そもそもお前は何者なの

電機メーカーの研究所でソフトウェア工学の研究を長年やって、そのあとAIベンチャーに入ってML/AI関連ソフトウェアの開発を主に担当しました。
その後、ここ2年くらいはIdein社内でスクラムマスター/アジャイルコーチとして、スクラムにどっぷり浸かっていました。

昔にはなりますが、過去にAlloy本とかTAPLとかの翻訳をしています。

なぜ転職を考え始めたか

理由はポジティブなものもネガティブなものも色々あって、それが複合的に絡まってこうなった、というのが率直なところです。

そんなうち、ここでは特に鍵になった話をいくつか並べてみます。

1. いつ辞めてもいい、と思いながら仕事をしていた

まず下地として、スクラムマスターになってから、「いつ辞めてもいい」と思いながら仕事をするようになっていました。

スクラムマスター(SM)の仕事の1つに、チームの開発の障害になるものは排除する、というのがあります。それは、その「障害」が会社のエライ人や重要顧客からくる無茶な要望であっても同じなわけです。

そんな話を真に受けて、自分はCXOが数億円の予算を持ったクライアントをバックに無茶振りをしてきても体を張って突っぱねたりしていました。
当然ながらそういう行動はMPをゴリゴリに消費するので、SMって辞める覚悟をしてないとできない仕事やな、と思い込んでいました。

2. Ubieを知った

でも、本格的に転職という言葉が頭をよぎり始めたのは、Ubieという会社を知ってからです。 元々古い知り合いだったおおたまんさんがいつの間にかUbieに転職していたことから会社の存在を知ったのですが、この時点では特にすごく興味を惹かれたわけではなかったです。
ただ、おおたまんさん、前職で上場企業のCTO(CDTO)を務めていたのに未上場ベンチャーの1エンジニアとして転職していて、ちょっとびっくりした、というのはありました。

本格的にUbieに興味を持ったのは、この記事をたまたま見つけて読んだときでした。

note.com

ベンチャーが成長し規模が大きくなるほど、良くも悪くも「普通の会社」になってしまい、ベンチャーとしての魅力をどんどん失っていく、というのはどこにでもある話です。

それを、少人数のベンチャー組織を会社内に作ってその他と隔離する……なんて大胆な発想で手を打とうとするその意欲と言うか、組織開発への意識の高さに感銘を受けました。
そのへんは、現在ホラクラシーを採用していたりする点にも現れているように思います。

そんなこんなで、こんな会社で働いてみたい……という意識が頭の中にちらつくようになりました。

3. スクラムマスターとしてもっと場数を踏みたくなった

それと相前後して、ちょうどIdeinでSMを始めてから1年ほど経って、ここで経験を積むことの限界を感じるようになっていました。

SMをド真面目にやってみるとわかるのですが、とにかく経験がモノを言うんです。場数をどれだけ踏んで、どれだけ自分の中に引き出しを持っているか、がSMとしての能力に大きく影響します。
で、Idein社内ではスクラム屋さんとして本当に色んなことをやらせてもらったのですが、段々と、Idein社内で直面する問題に対処するのにIdein社内で得られる経験だけだと足りない、と感じるようになりました。

それで、スクラムのカンファレンスにもたまにちょこちょこ顔を出すようになったのですが、一方で「ぜんぜん違う会社に移って、そこで新たな経験を積むのもいいかな」と思うようになりました。

4. 諸々の事情で選考に進み始めた

とはいえ、Ideinでまだまだやっていく意欲も全然あったので、「当面転職の意思はないけど、少し先のことを考えて」色んな会社のカジュアル面談だけ受けて回るようになりました。

それがどうして本格的に選考に進む気になったかというと、1つは、自分のチームが担当しているサービスのローンチの予定がなくなった、というのがありました。
元々、転職を考えるならそのサービスが無事にローンチするのを見届けてから、という意識が強かったのです。それが、諸々の事情で社外向けのローンチが無期限延期になり、転職を先延ばしにする理由がなくなったのです。
(別にこの決定自体をネガティブに考えていたわけではないです、念の為。むしろ社内でじっくり育てたほうがいいフェーズだと思っていたし、実際、このプロダクトはそれで現在成果を上げつつあります。)

他にもまぁ、ネガティブな理由も作用するにはしました。その話は書いても詮無いものなので書きませんが、一時的なものだったし、会社を辞めるほどの内容ではなかったです。
ただ、他社の選考を受けてみようと思うには十分な理由にはなりました。

スクラム人材としてびっくりするほど評価された

話が相前後しますが、カジュアル面談ベースで緩い転職活動を始める際、まずきっかけとなったUbieは外せなかったんですが、一方で、もう少し可能性を広げてみたくて、いくつかのチャネルから他社も色々見て回ることにしました。

最初の時点では、普通のエンジニアとして転職活動するか、スクラムマスター(SM)やエンジニアリングマネージャー(EM)としてやるか結構迷っていたのですが、そのへんの意識を変えるできごとが、転職活動を始めてから起こりました。

活動を始めてみると、とにかくSMとしての引き合いがとても強いのです。特に、LinkedIn経由で外資からSM、もしくはアジャイルコーチの引き合いが死ぬほど来ました。

更にはカジュアル面談をしてみると、自分のSMあるいはEMのスキルがとても市場価値が高い、というのに気づきました。SM/EMのポジションでカジュアル面談を受けた、結構な数の会社から「ぜひうちに来て欲しい」という類のラブコールをもらいました。

選考が進んでダメだった会社ももちろんありましたが、そのうち複数の会社からのお祈りメールには「今回はどうしても条件が合わず見送りになったが、機が熟したらぜひこちらから声をかけさせて欲しい」なんていう、そうそう見ない言葉が書かれていました。

そしてSMのポジションでオファーをくれた1社は、自分の希望年収より約20%高い報酬を提示してくれて、死ぬほどびっくりしました。

自分がIdeinでやってきたことは決して間違いじゃなかったんだな、と、すごく自信になりました。

どうやって進路を決めたか

結果としてオファーをくれたのは、Ubieと、上述のSMポジションで高い評価をくれた会社の2社でした。それと現職に残るのも含めて、3つのオプションのうちどれを取るか、で悩むことになりました。
ちなみに、Ubieでは「コードを7,8割書く」エンジニアとしてのジョインを、他の2社はスクラム関連の仕事を期待されていました。

そんな中、僕の方からおおたまんさんに、もっとUbieの事を知りたいから話したい、色々話を聞かせてほしい、と相談したところ、そのおおたまんさんの計らいで、Ubieのオフィスに招いてもらって、一緒に働くことになりそうなエンジニアの方々と酒も交えながら一緒に御飯を食べることになりました。

そのときの様子が、とにかく印象的でした。みんな一介のエンジニアのはずが、自分のプロダクトについて技術だけでなく、事業や組織の目線で語れる人ばかりでした。僕は近年そういうのがエンジニアの理想形だと思うようになっていたんですが、それを地で行く人たちばかり、という状況に驚かされました。
そして何より、皆さんが本当に楽しそうでした。既に社員数250人程度に育った会社で、未だにベンチャーの空気感をちゃんと残していました。

自分がそのことを口にすると、同席していたとあるエンジニアの方が

会社が小さいうちはどんなベンチャーだってこういう空気感でいられるんだけど、会社が大きくなってもそれを維持するためにはとてつもないコストを払わないといけない。 僕たちは皆でそのコストを払ってるから、これが維持できてるんだよ。

てな感じのことを言われたのがとても印象的でした。

後から振り返ると結局、この食事の場が決定打になった気がします。この会社のオファーを蹴るのは損だ、と強く思わされました。

とはいえ、その後も結局ギリギリまで悩みました。SMとして自分を高く評価してくれている企業もあり、また自分のスクラム関連のスキルはすごく市場価値が高いらしいのに、それを本業にしなくていいのか、そこにオールインしてそっちのキャリアを積まなくていいんだろうか、という思いもずっと感じていました。

ただ最終的には、スクラム関連で自分が今まで獲得したスキルを活用しながら仕事するより、Ubieという独自のカルチャーを持つ会社に入って、自分自身がもっと色んな事を学びたい、という気持ちが勝ってしまいました。

あとこの時点で、matsuri technologies での副業が決まっていたのも実は最終決定に大きく影響しました。matsuriも当初は転職活動の一環で面談したのですが、トントン拍子に副業でアジャイルコーチングをすることが決まっていたのです。
それで、スクラムアジャイルのキャリアは副業にして、本業は普通のエンジニアでいいかな、と思えるようになっていました。

現職にも残るという選択

で、現職のIdeinに退職希望を伝える運びになりました。ただ、元々Ideinがどうしても嫌で辞めるのではないし、Ideinでは自分がスクラム屋さんとしてかなり色々な施策をやってるさなかで、このタイミングで僕が抜けて、僕がやりかけていた仕事が立ち行かなくなる、といった事態は避けたかったのです。
だから「辞めてからも必要なら業務委託でコーチングやります」というのも一緒に伝えました。

最終的に、Ideinとしてもコーチングしてもらうのはありがたい、と言ってもらえて、正社員でなくなるのと入れ違いで、アジャイルコーチの業務委託を引き受けることになりました。

他にも面白い体験をいっぱいしました

ここまではひたすら「上手く行った」話しか書いてませんが、裏では当然ながらドタバタも失敗もありました。

ある会社では、カジュアル面談で「ぜひウチに」とラブコールをくれていたにも関わらず、選考に進んだら1次面接で「ウチに合わない」という理由でバッサリ落とされて唖然としたとか。

他のある会社では、向こうからカジュアル面談のお誘いをもらって、こちらの条件を伝えつつ「こういう条件でいいならぜひ」と応じて面談したものの、結局その条件が気に入らなかったらしく10分で向こうが興味をなくして終了したとか。

他にも色んなことがありましたが、デリケートな内容も多いのでこれ以上は文章にはしません。 ただなんというか、普段外からは伺い知れない各企業の文化や風土や考え方などを、転職活動を通じて知ることができて、色々な意味で本当に興味深いものでした。自分が採用する側になった場合を考えても得るものが多かったです。

Findyさんにお世話になりました

最後に、今回の転職ではFindyさんにかなりお世話になりました。

今回はどうしても転職したいという状況ではなかったので、いくつかの転職サイトに情報を登録する以上のことはほとんどしてなかったんですが、Findyは

  • 届く求人案件のマッチングの度合いがその中で一番高かった(大ハズレがほとんどなかった)
  • ユーザーサクセス部の方のコンサルティングで、自社紹介案件かそうでないかに関わらずフラットなアドバイスを継続的にもらえた

というので大変重宝し、最後はめちゃめちゃ頼り切っていました。

Findyというとスキル偏差値ってイメージが強くて、それへの評価も色々だと思うんですが、こんなに転職活動をサポートしてもらえるとは(失礼ながら)正直思ってませんでした。
本当にありがとうございました。

2023.10.8 追記

ここから更に一波乱あったので、そのことを改めて書きました。

bonotake.hatenablog.com

Ubieは中途半端なところで辞めることになってしまい、申し訳ないやら何やら、色々な思いがあります。
ただ、少なくとも自分は辞めてもまだUbieのファンでいますし、今は社外から応援しています。

注:bonotakeは、amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。