bonotakeの日記

ソフトウェア工学系研究者 → AIエンジニア → スクラムマスター・アジャイルコーチ

勉強会を開いてスクラムのCSP-SM資格を取得した話

これはスクラムマスター Advent Calendar 2023の12日目の記事です。

僕は11月にCSP-SM という資格を取りました。 CSP-SM というのは Certified Scrum Professional-ScrumMaster® の略で、Scrum Alliance が発行するスクラムマスターの資格の中では最上位のものになります。

で、自分はこのCSP-SMを取るために勉強会を開いて、色んな人に手伝ってもらいました。

bonoake-csp-sm.connpass.com

(あんまり告知せず細々とやってたつもりなのに、こないだ某スクラムコミュニティの集まりに行ったらみんなこの勉強会のことを知ってて結構恥ずかしかった)

こんなやり方でスクラムマスターの資格を取った人も珍しいと思うので、なぜこんなことをしたのか、何をやったかの体験記を書いていこうと思います。

目次:

勉強会を開くまで

CSP-SM研修を始める

自分がCSP-SMを取ろうかなとぼんやり考えたのは、確か今年の初めごろだったと思います。(理由はとりあえず割愛)
その頃って、国内でのCSP-SM研修はodd-eさんで前年に1回開催されたくらいで、第2回が開催されるかどうかも僕にはわからない状況でした。

それでネットを色々検索して、どうやったら日本でもCSP-SM研修が受けられるか探ってみたところ、このnoteがすごく印象に残りました。

note.com

自分のペースでやれるなら英語での研修もアリか、くらいに思っておりました。

で、実はこの頃まだA-CSMも取っていなかったのですが、A-CSMはアギレルゴさんでやってるZuzi Sochovaの研修を受けると決めていたので(彼女の本『SCRUMMASTER THE BOOK』のファンだったもので……)9月開催の予定が出たタイミングで早々と予約してしまい、それを待つ数ヶ月の間にCSP-SMをどこで受けるか探す、という感じの日々が始まりました。

上のnoteで紹介されていた講師の方はもう同様の、毎回1on1でメンタリングしてくれるスタイルでのCSP-SM研修を開催してなくて、Scrum Allianceのコース検索でも同じようなものは見つかりませんでした。

ただ、コースの種別選択に "Self-Paced" というのがあることに気づきました。
自己学習型、いわゆるe-ラーニングスタイルで、教材がテキストや動画で提供されて、基本的にはそれで自分で勉強していくスタイルのものでした。

それで本当に勉強になるのかあまりにも不安だったので、めちゃめちゃ悩んだ挙句、その検索で出てくるCSP-SM研修や講師の名前をひたすらぐぐって、評判を確認してみることにしました。

番役に立ったのはRedditで、数少ないながらも受講者の書き込みがちらほらありました。
ボロクソに叩かれてるコースもある一方で、比較的評判が良かったのが3back.comの研修でした。テキストが良くて、資格を取った後もよく参照してる、みたいなコメントが印象に残りました。

と言ってもRedditの匿名性の高い書き込みなんで、どこまで信用して良いかもわからず、最後まで悩んでいたのですが、結局ここに決めました。安かったし。
ということで、お金を振り込んでコースを開始したのはスクラムフェス三河の1日目が終わった日のホテルでした。ちなみにA-CSMを取得したのはその前日です。

勉強仲間を探すことに

で、早速教材にアクセスできるようになったんですが、いきなり大きな壁に直面することになりました。

Self-Paced な研修って、単に教材を提供するだけでなく、実際にちゃんと勉強したか確認するために色々な課題を出して、そのエビデンスを提出するものが結構あるようです。 教わったことを自分のチームで実際に適用してみて、その記録をログにして提出させるものとか。
で、僕が始めた 3back.com のものは 周囲の誰かと一緒に勉強し、一緒にディスカッションやグループワークをして、その結果をレポートにまとめて提出する というものだったのです。

ホームページにあるガイダンスにもやんわりと書いてあったのですが、その時点では理解できず、コースを初めて一番最初の詳しいインストラクションを読んで初めて気づきました。
完全に独学でできると思いこんでいたので、ホテルでインストラクションを読みながら呆然としたのを覚えています。

そういう周りに仲間のいないぼっち受講者のために勉強仲間探し用のフォーラムも併設されているのですが、1週間に1人くらいしか書き込みがなく、しかも自分の場合は時差があって(参加者の大半は米国在住ぽかった)そこで仲間を探すのは早々に断念しました。

勉強会を開くことに

とりあえず、近しいスクラム実践者の人たちに個人的に声をかけはしたものの、自分の研修に常に同じ人に参加してもらうのは無理がある、とも思いました。 僕の資格取得のための勉強に全部ボランティアで付き合うほどモチベーションが高い人ってそうそういないだろうと*1
また、受講期限は3ヶ月以内と決まっていて、逆算するとかなりハイペースでコースを消化していく必要があったので、勉強仲間の都合で先に進めなくなる、みたいな事態は避けたかった、というのもあります。

なので思案の末、connpassを立てて勉強会を開き、参加者を公募することにしました。

やってみた結果

そんな感じで、色々なギャンブル要素を乗り越えていった結果ですがめちゃめちゃ面白かったし、めちゃめちゃ勉強になりました。

そもそもまず、よくある数日間拘束の同期セッションでの研修に比べて、結果的にですがめちゃハードでした。やってみるまで逆だと思ってました。
週2回2時間の勉強会を開催して、その準備のために1時間予習して、終わった後も提出するレポート作成や次回告知のために30分〜1時間作業して……てのをやってて、まぁまぁしんどかったです。
最初は平日21時〜23時でやってたんですが、何回かやるうちに明らかにオーバーワーク気味になってきたので、週末の午前中開催に変更しました。

あとテキストですが、Redditの噂は本当で、すごく興味深いものでした。講師はDan Rawsthorneという方で、数学の博士号を持っているというだけあって、印象としてはかなり理論的で、特に大きな企業内でスクラムを展開する場合を想定した、かなり現実的な思考のフレームワークを提供するものでした。Zuziの本や研修では自分がどこか修行僧になったような気分になるのですが、それとは全く毛色が違うな、という印象でした。
日本のスクラムコミュニティではあまり聴かないような内容も多く、直前のA-CSM研修ともガラッと変わった内容で、とても新鮮で、刺激になりました。

で、何より参加者とのディスカッションが本当にためになりました。僕なんかよりずっと経歴の長い先輩方もちょこちょこ参加してくれて、あと教材がかなりディスカッション向きだったのもあり、毎回かなり議論が白熱しました。僕が課題を提出し終えてからも延々1,2時間議論していたこともありました。(いや、本当にありがたかったです。)

そういう意味では、やっている間いろんなことを考えさせられたし、結果、かなり自分の身になったと感じています。間違いなく受講料の元は取れたし、やった甲斐は間違いなくありました。

ライブセッション

ちなみに、全部e-ラーニングでの自己学習というわけではなく、コース修了までに4回、Zoomを使ったライブセッションに参加する義務がありました。(他のどの Self-Paced 研修にも4回のオンラインセッションは必ず入っている感じで、おそらくCSP-SM研修の要件として必須になっているんだと思います。)

自分は、色々な国の人たちが集まる国際カンファレンスに参加して、講演を聞いたりディスカッションをしたり、はできるくらいの英語力です。いわゆるESL*2として、同じESL、つまり母国語が別にある人と英語で話すならそこまで苦にはならない、くらい。
そんな自分ですが、3back.com のオンラインセッションは結構きつかったです。体感8割以上は米国からの参加者で、講師のDanもめちゃめちゃアメリカ人の、しかも早口でひたすらしゃべり倒す人で、彼の話やネイティブ同士のディスカッションを全部聞き取るのは結構ハードでした。
とはいえ、内容はすごく面白いものが多くて、あまりにもったいないので2回めからは文字起こしのアプリを持ち込んで、気になったところはそれで取ったログを終わった後で読み返す、みたいなことをしてました。

あと、10分くらい参加者同士2〜3名でフリーディスカッションをする時間があったんですが、それはまぁ、それなりに何とかなりました。(相手が合わせてくれたとも言える。)
米国の、結構な大企業の中でスクラムマスターやってる、みたいな人が多くて、僕は日本人、というのもありますが、フリーランスアジャイルコーチという身分が結構珍しがられた感じでした。

おわりに

ということで、まとめると、やってみて本当に良かったです。
めちゃくちゃ勉強したし、めちゃめちゃ面白かったし、めちゃくちゃ勉強になりました。
かなり自分の血肉になったと感じています。

そんなわけで、僕と同じような自己学習型の研修を同じ人に勧めたいという気持ちもありつつ、やっぱり英語力が壁かなぁと思いました。
e-ラーニングの教材は、今どきは翻訳サイトもあったりして割とどうとでもなる気がしますが、やっぱライブセッションをこなすには、英語はできたほうが良いです。どの程度あったほうがいいか、まではわからないですが、やっぱり講師の話やディスカッションを直接聞き、あわよくば参加できる機会はとても貴重で、英語ができないともったいない、と思います。
3back.com は米国人8割な感じだったのですが、他のところだと(あくまで売り文句をそのまま受け売りすると)世界中から参加者が集まるようなのもあるようで、そちらはそちらで狙い目かもしれません。

あと、僕は勉強会で「僕の資格取得にボランティアでつきあってくれる人」を募集してやりましたが、たぶん理想は、一緒にCSP-SMを取る仲間を集めて、その人たちと一緒に申し込んで、一緒に勉強していく方法なんだろうなと思います。(ちなみに 3back.com は5名以上のグループでの参加申込だと受講料のディスカウントがあるっぽいです。)

というわけで、本当に貴重な体験をすることができました。
最後に、僕の勉強会に付き合って、僕といっしょに勉強してくださった皆様、本当に本当にありがとうございました。

*1:実は結果的には、最初の回から最終回まで皆勤だった人もいました。その方と2人だけの回もあって、本当にありがたかったです。

*2:English as a Second Language、2つめの言語として英語を話す人のこと。

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