※ 今までになく超まじめに、長文だらだら書きました。注意(笑)
「せっかく才能があるのに、それをちゃんと使わないのはもったいない」
先日、とある知人と食事をしたときに、その人が共通の仕事仲間を指して言った台詞。その仕事仲間は、当初その才能をいたく買われていて、今でも専門領域に関しては相当のレベルにいるのだけれど、ある時期から仕事に対する熱意を見せなくなってしまい、今やちょっと『窓際』的ポジションを確保してしまっている。
彼の台詞を聞いたとき、はたと考え込んでしまった。というか、こないだの壁の話もそうだけど、それ以降も偶然だか何だか、同じような事を考えさせられることが最近多い。彼の発言もその1つ。
で、その度に(本当は、この文脈でこの台詞を引っ張るのは少し抵抗があるのだけど)彼の発言と似たある台詞が、頭の中を巡る。
※以下、いくつかの文芸作品について、なるたけ回避しつつ、でも多少のネタバレを含んでます。
それは、『グッド・ウィル・ハンティング~旅立ち~ [DVD]』で、チャッキー(ベン・アフレック)がウィル(マット・デイモン)に言った台詞。
But you, you're sittin' on a winning lottery ticket and you're too much of a pussy to cash it in. And that's bullshit 'cause I'd do anything to have what you got! And so would any of these guys. It'd be a fuckin' insult to us if you're still here in twenty years.
数学の超天才でありながら、その才能を生かす仕事に全く興味を示さない親友を見て、ふざけんなと叱咤する。俺たちがどんなに欲しいと望んでも持ち得ない才能をもっておきながら、それを生かさないのは俺たちへの侮辱だと。この映画の数多ある、かっちょいいシーンの中の1つ。
で、自分も昔、似たようなことを(こんなかっこいいシチュエーションでも台詞でもないけど)友人に吐いたことがある。ただ自分の場合、実はその後、ものすごく悩んだ。何だか自分の勝手な思いを相手に押し付けたような気がして…自分は、本当に彼のことを思ってその言葉をかけたんだろうかと。
その後、実際にウィルがどうしたかは、映画を見てもらった方がいいけど。ただ、彼の最終的な選択と、それに対するチャッキーのリアクションが、自分はもう、たまらなく好きだったりする。
もう1つ、やっぱり自分の頭の中にこびりついていたもので、自分が座右の銘にしている詩がある。宮沢賢治の『告別』。
(前略)
そのあとでおまえのいまのちからがにぶり
きれいな音の正しい調子とその明るさを失って
ふたたび回復できないならば
おれはおまえをもうもう見ない
なぜならおれは
すこしぐらいの仕事ができて
そいつに腰をかけてるような
そんな多数をいちばんいやにおもうのだ
※ http://why.kenji.ne.jp/haruto2/384kokubetu.htmlより。
さらっと詠むと、ちょっと驕慢な印象を受けるのだけど…これが、音楽に対する秀でた才能を有しながら、困窮の為に音楽の道に進めず、貧しい農民の道を歩まざるを得なかった教え子に向けた詩、だという事を踏まえて、更に後半を詠むと、少しだけ印象が変わる。
もしもおまへが
よくきいてくれ
ひとりのやさしい娘をおもふやうになるそのとき
おまへに無数の影と光の像があらはれる
おまへはそれを音にするのだ
みんなが町で暮らしたり
一日あそんでゐるときに
おまへはひとりであの石原の草を刈る
そのさびしさでおまへは音をつくるのだ
多くの侮辱や窮乏の
それらを噛んで歌ふのだ
もしも楽器がなかったら
いゝかおまへはおれの弟子なのだ
ちからのかぎり
そらいっぱいの
光でできたパイプオルガンを弾くがいゝ
実は元々、私は前半が好きだったのだが、最近いろいろ考えるにつれ、やっぱり最後の部分抜きにしては語れない詩なんだなと感じるようになった。
更にもう1個、ふと思い出したもの。『ピンポン』。
ピンポン (5) (Big spirits comics special)
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でも、少し時間が経ってから、それはそれで、すごくかっこいいなと思うようになった。結局、3人の人生、それぞれがそれぞれに、かっこいいと思う。
…なんか、ものすごくガラじゃないことを書いてしまった気がする。しまった。