bonotakeの日記

ソフトウェア工学系研究者 → AIエンジニア → スクラムマスター・アジャイルコーチ

RSGT2024に参加しましたの記

RSGT2024 記念の品

RSGT2024に参加してきました。 3日間のイベントですが、前日にスピーカーズディナーという関係者のみのプレイベントにも登壇者として参加でき、結果として4日間まるまる呑みっぱなし堪能しました。

ということで、感想をつらつらと書いていこうと思います。思ったよりも少し長くなりました。

参加前に意識していたことと、それが結果どうなったか

今回参加するにあたって僕が意識していたこと、目的にしていたことが3つありました。

  1. 登壇する
  2. 焼肉レトロを作ったチームで焼肉を食う
  3. Zuziと話す

それぞれ、どんなことが起きてどうなったか、ふりかえって見ようと思います。

登壇した

speakerdeck.com confengine.com

2023年、僕にとって人生の転機とも言える出会いがあり、その話をプロポーザルに書いたら有り難いことに採択され、登壇しました。
学術研究の紹介ということで結構マニアックな内容でもあり、沢山の人に刺さるものではなかろうと思いつつ、でも結果的に多くの人から賞賛の言葉を頂いて、とても嬉しかったです。 あと、「ゾンビスクラムサバイバルガイド」の翻訳者お3人が全員来られて最前列に陣取られて、嬉しいという気持ちとプレッシャーとを両方同時に感じながら講演していました。最後は「ゾンビスクラム〜」の献本&サイン会になっていて、ちょっと面白かったです。

今回、資料の作成にとても悩みました。話したいことが色々あってどうしても考えがまとまらなかったのが大きかったです。
本当はもう少し論文の内容を重点的に話すつもりで、後半の僕の今の研究の話なんかはオマケだったのですが、別途、論文著者の Christiaan Verwijs にビデオメッセージを頼んだらがっつり僕の研究の話をしたものを送ってくれたので、じゃあ自分の話もするしかないか、と、当初の予定よりかなり多めにポジショントークをすることになりました。

あともう1つは、この研究を紹介することの「副作用」が気になってきたからでした。

講演の中で述べたことですが、ForsgrenのFour KeysやSPACEフレームワークといった開発生産性の研究って、今回紹介した研究と結構近いことをやっているんです。
で、Four Keysの研究でForsgrenはすごいことをやってのけたんです。だって、一見outputを測っているだけのDevOpsの指標のうち4つが、outcomeを通り越してimpactと強い相関を持つ(持たせることができる)、ということを実証してしまったので。
研究としてはノーベル賞クラスの大発見だと思っています。

ところが、日本では去年辺りから妙な形でバズり、結果として、それらの意味も理解せずに闇雲に導入してデタラメに使う人と、それを見て「Four Keysなんて…」と批判する人とで溢れかえる状況になってしまいました。元の研究の価値がすっかり毀損されてしまった現状を見るにつけ、本当に残念だと思っています。
だから、自分がこの研究をRSGTなんて大きな場で紹介することで、彼らの成果も同じ運命を辿ってしまったら嫌だな、と。

というあたりで、そのあたりをどうフォローするか、かなり悩みました。発表直前ギリギリまで調整してて、似たような話題を扱っていた1日目のryuzeeさんの『ベロシティ Deep Dive』の資料を見ながら更に調整を入れたりしていました。
でもまぁ結果的には、用意していたスライドをほとんど削りました。話が全然違う方向に発散してしまいそうだったので。
(この辺については語りたいことが沢山あるので、いずれどこかで話のネタにします)

似たような話で、この研究が「唯一絶対の真理」みたいに取られてしまうのは嫌だな、という気持ちもありました。タイトルにtheory(理論)とかついてるし、科学っていう錦の御旗を掲げてしまうと、本来以上に普遍的なもの、と思われてしまいそうで。
本来ならもっとたくさんの科学研究がなされて、その中で切磋琢磨され研磨されていって初めて大きなファクトに到達する、というもので、この研究だけで完結するものでもないのです。

講演の中では、「理論」はあくまで1つのモデルである、といった説明をしましたが、次の日にKiroさんと立ち話をしていたら、不意に「PLoP(パターンコミュニティのカンファレンス)に来ない?」と誘っていただいたりして、言われてみればこれってパターンだな、と思ったりもしました。僕が紹介した論文では社会科学的な手法を使ってますが、そうじゃなくてアレグザンダー流のパターンランゲージを使うとパターンになるのかも。手法やそれが生まれてきた文脈が違うだけで、目的や位置づけは結構近いように思います。

話が少し横道にそれましたが、ともかくも、それなりに好評をもらえて良かったです。終わった後にもいろんな方と議論させてもらえて、今後の研究の糧になりそうなネタもいっぱいもらえました。
論文の著者にもフィードバックして、今年これからは本格的に研究がんばっていきます。

あ、あと、講演その他で今後の研究で行うアンケートに協力頂ける方を、当日参加してからの思いつきで募集し始めたんですが、思ったより多くの方に応募いただけました。とても感謝しております。

焼肉レトロを作ったメンバーで焼肉を食った

僕の2番めの目的は、「チーム焼肉」のメンバーとリアルで会って、焼肉を食うことでした。
チーム焼肉というのは、1日目にSatoshi Haradaさんが講演した「焼肉レトロスペクティブ」を考案した、あるA-CSM研修の中で結成されたチームです。

confengine.com

研修はオンラインだったのですが、いつかリアルに集まって焼肉を食べよう、と約束していたのでした。

そしたらメンバーの1人であるHaradaさんが、研修の中で生み出された「焼肉レトロスペクティブ」をネタにプロポーザルを出し、採択されてしまうという驚きの展開に。
しかも当日は、研修の講師だったZuzi Sochovaも来る、というので、「RSGTに来れるメンバーだけでもそこで再会して、焼肉を食いに行く」というのが僕の中でも目標になっていました。

1日目、無事にHaradaさんの講演を見届けた後、チームメンバーのうち何とか集まった4名+飛び入り2名の合計6名で、会場近くの焼肉屋に焼肉を食べに行きました。
残念なことにHaradaさんは講演で力尽きたようでそのまま帰宅されてしまったのですが、再会するのに一番大変かも、といっていた島根のメンバーも参加されて、本当に貴重な時間になりました。

焼肉のようす

Zuziと会って話した

上にも書きましたが、今回のRSGTにはZuziも来るとことに気づいて以来、Zuziにリアルで会って話すぞ、というのが僕の中のミッションとなりました。
というのも、僕がスクラムの道に真の意味で入ったのは、彼女の『SCRUMMASTER THE BOOK』を読んだのがきっかけだったからです。

僕は最初にスクラムマスターをやったチームで壁にぶち当たり、苦悩している最中に勧められて彼女の本を読んで、スクラムとは何か、スクラムマスターはどうあるべきか、ということを初めて理解できた、と思っています。

……という話を、1日目の会場で彼女を見かけて声をかけ、直接話しました。

このとき、「理解できた」の意味の英語として got to know とか understood じゃなく "found" という単語が口をついて出て、うわ変な英語になっちゃったと思いつつそのまま喋っちゃったのですが、今思い返してみると、僕自身の感覚の表現としては正しかったのかも。
いずれにせよ、Zuziがそれを聞いてとても喜んでくれて、それで僕もすごく嬉しかったのでした。

時間が前後しますが、その前にまず「あなたのクラスの『チーム焼肉』が研修中に作ったレトロスペクティブについて今日メンバーの一人が登壇する」と説明し、登壇者のHaradaさんのところに連れて行って引き合わせ、Haradaさんの緊張をぶちあげるなどしました。

サインをしてもらおうと思っていたのにその日は本を持ってこれなかったので、2日目に持ってきて彼女を探し、サインしてもらいました。(このへんはただのミーハーなファンと化している。)

3日目、トラブルがあって1時間くらい遅れて会場入りした僕は、OSTのサークルを見て回るうちに、やはりOST中のあるテーブルを覗き込んでいるZuziとすれ違いました。
そしたらそこで目があって、向こうから声をかけてくれて、そのまま2人で5分くらい立ち話で雑談をしていました。いやいや、何でこんな気楽にZuziと話せるんだ? すごいぞこの会場。すごいぞRSGT。

後から振り返ると、あんなに話せる時間があったならもっと彼女にスクラムやリーダーシップの話をしたかったなぁと思ったりもしたんですが、向こうからすれば、気楽な雑談混じりのほうが嬉しかったかもしれません。

全体の感想:カンファレンスからギャザリングへ

僕は前年が最初のRSGT参加で今年が2回めだったんですが、明らかに僕の中で位置づけが変わりました。

去年の僕は本当に一人ぼっちで、講演を一通り聞いた後は誰とも交わらず、すぐに家に直帰していました。
今年の僕は、会場には見知った「仲間」が本当に多数いて、そんな仲間たちと廊下での立ち話や終わった後の飲みの場でディープな話をするのが、各講演を聴講するよりもメインになっていた気がします。 まさに、去年は「カンファレンス」に参加した感覚でしたが、今年は文字通り「ギャザリング」になりました。

本当に楽しませてもらいましたし、この貴重な場を提供してくださってる方々に感謝しつつ、来年もぜひ参加したいです。できればまた登壇者として、今度は研究の成果を発表しに。

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