この記事は、機械学習工学/MLSE Advent Calendar 2019の25日目の記事です。
最終日ということで少し趣向を変えて、技術の話ではなく、MLSE(日本ソフトウェア科学会 機械学習工学研究会)の現在の取組みに関する話を書こうと思います。 なので、書く場所をQiitaでなく自分のブロクにしてしまいました。
僕はMLSEの立ち上げメンバーの1人ではあるんですが、特に夏頃からまたMLSEへの取り組みを本格化しました。
というのは、自分から見てMLSEの色々な課題が見えてきたからです。
特にそれがはっきりしたのが、今年7月に行われたMLSE夏合宿2019でした。
今年の夏合宿に参加して
夏合宿に参加して、参加者といろいろ話して気づいたのですが、1年以上前と変わらない課題意識を抱えてる人が沢山いたのです。
たとえば、
機械学習プロジェクトの標準的なプロセスを定めたいですよね。
といったコメントなど。
私たちは研究会として正式に発足する前、2017年の11月頃からずっと活動しているのですが、このようなコメントは2017年も、2018年の第1回ワークショップでも聞かれたものなのです。
新しい発見が出ないと前に進まない独自研究ならともかく、こういった活動は誰かが着手すれば進むのですが、みんな「欲しい」「やりたい」と言うものの、実際に手をつける人がいなかったわけです。
また、少し関連しますが、MLSEに参加を希望する方はすごく多いのですが、実際に自ら研究して成果を発信する人の数が少ないな、という印象もありました。これは僕だけではなく、数人のMLSE運営委員からも聞かれた話です。
MLSEは、各々が研究した成果を発表し合う場を提供する、というのが本来の趣旨です。もちろん分野の裾野を広げるために、自ら手は動かしていないが興味を持って情報を仕入れに参加する方もwelcomeなのですが、ただ情報をgiveできる人がまだまだ少なく、情報をgiveする人とtakeする人のバランスが現在非常に良くないのです。研究分野が機能するためには、もっと自らの手で研究する人が必要です。
今年の夏合宿は特に論文の査読なども行わなかったこともあり、発表された研究の成熟度・完成度は非常にまばらでした。研究成果を発表してくださる方を増やすには、発表の数を増やして裾野を広げることも重要ですが、質も重要です。これは我々がきちんと担保していく必要があります。
ワーキンググループの設立へ
先ほどのような問題はひとえに、現在の我々MLSE運営の至らなさだと思いました。
昨年、立ち上がったばかりの研究会に非常に多くの方に関心を持ってもらい、たくさんの方に参加してもらったので、どこか慢心というか、勘違いしてしまっていたのだと思います。
まだできて2年目なので、自ら研究してアクティブに参加してくれるプレイヤーが少なくて当たり前だったのですが、そこに気づかず、ただ発表の場だけを用意すれば勝手に色んな人が発表しに来てくれると思いこんでしまっていました。
ですので、単なるイベントの開催だけをやるのではなく、年間を通じて継続的に研究をサポートしていく必要があると考え、WG(ワーキンググループ、作業部会)を設置することにしました。
そして、いくつかのテーマを元に、複数の方に幹事になっていただくべく声をかけさせていただき、結果、3つのWGが発足しました。
- プロセス・事例収集WG
- システム基礎WG
- 本番適用のためのインフラと運用WG
詳細はこちらに書いてあります。
来年の夏合宿
そして、来年の夏合宿についても、実施内容に色々手を加えました。(あ、僕は実行委員長に立候補しました。)
既にCFPが公開されていますが、こちらでもう少し動機づけのあたりを掘り下げて書いていこうと思います。
最近、特に機械学習関連分野の研究はarXivやストリーミングの普及もあって、新しい研究の情報はオンラインですぐ共有されます。ですので、特に国内学会が研究集会を開催する意義が昔とかなり変化している、あるいは変化させなければならないと僕は思っています。
それは僕が思うに、オフラインで交流するメリットを活かした、まだ活字などの形にならない萌芽的な研究やちょっとしたプラクティスの情報、あるいは課題意識を、参加者の間で共有し、議論することです。
ですので次回の夏合宿は、論文を募って発表してもらういわゆる研究発表会と、皆で議論をするワークショップのハイブリッドを目指すことにしました。
今まではシングルトラックで1泊2日の合宿だったのですが、マルチトラックで2泊3日とし、分厚い内容にしようと思っています。
このうち、セッションの企画を提案してくださる希望者には、(もちろん実行委員の審査の上ですが)好きなテーマ・内容で1セッションの運営をお任せすることにしました。(以下のフォームで募集しています。)
なお先ほどご紹介したWGからはそれぞれセッションの提案が義務となっていますので、これらのテーマのセッションは必ず開催されます。
一方、投稿してくださる論文の質の向上を促すため、今回からPC委員会を設置し、厳正な査読を行うこととしました。 採択本数よりもクオリティを重視し、夏合宿に採択されることがこの分野でのステータスにしてもらえるようになったらいいな、と考えています。
おわりに
ということで、MLSEまだ2年目(最初期の活動からは3年目)ですが、これからも色々活動内容をブラッシュアップして、この新しい分野の発展に寄与していきたいと思っています。
ぜひ、これからも奮ってご参加頂けると嬉しいです。