bonotakeの日記

ソフトウェア工学系研究者 → AIエンジニア → スクラムマスター・アジャイルコーチ

Abramsky & Coecke の量子テレポーテーションがちょっとわかりかけてきた

[量子]のタグ作ろうかという勢いで、続き。檜山さんがまとめているように皆さん色々ブーたれているのですが、以前拾った論文(これ)を今日つらつらと読んでいて、衝撃の事実を発見しました。


みんなが、量子テレポーテーションだと思って議論していたコレ↓ですが、

量子テレポーテーションの図ではないことが判明しました。
つか、勉強会のテキストにもちゃんと書いてあったのです。上の図が貼ってある直下に、

This is not quite the whole story, because of the non-deterministic nature of measurements.

とあります。(強調は引用者)で、

But it suffices to introduce a unitary correction. Using picture (3) the full description of teleportation becomes:

と続いて、次の図につながります。

本当の量子テレポーテーションの図はこっちです。

新たに f^{-1}_i の箱ができていますが、これが「復元回路」Uxに相当します。で、(ここからが今まで勘違いしていた事の2点目)ピンクだった上三角が緑色になり、中にf_iと書かれていますが、これは \eta^{\dagger}_{A^*} ではなく、 \eta^{\dagger}_{A^*}f_i の合成 (正確には、 \eta^{\dagger}_{A^*} \circ (f_i \otimes 1_{A^*}) )です。ピンク上三角に f_iエンコードされたもの、というのが直観的な解釈になるでしょうか。

全体の矢印を引っ張ると、緑上三角(≠ ピンク上三角)に隠れていた f_i が現れ、復元回路 f^{-1}_i と合成されて消えてしまう(=恒等変換になる)、てな解釈になりそうです。肝心の観測による効果ですが、添字 i が1つに決定することが対応している模様。

下三角にも別の関数(作用素)をエンコードすることで(つまり、ベル状態でないエンタングル状態を利用することで)より一般的なテレポーテーションもできる、とか(これはテキストでないほうに)書いてあったようななかったような。


つーことで、私が以前書いた

ここまでの理解が正しければ、AbramskyやCoeckeが"Bell-costate"と呼んでいるものは、いわゆるベル状態と対になるのではなく、ベル状態+復元回路と対になっているらしい。

はかなりの部分正しかった*1ようですし、また

Abramsky流量子テレポーテーションは、一般的に言う量子テレポーテーションから古典チャンネルと復元回路を取り払った部分のみを扱ってる

は、「Abramsky流量子テレポーテーション」を、「ピンク三角のペアからできている図」と置き換えれば正しいのです。一方で、上記に反論して檜山さんが書くところの

古典情報の転送と復元回路(ユニタリ変換)を省略しちゃう、ってのは考えにくい気がしました。そこがテレポーテーションのキモだとすると、骨抜きの定式化になってしまう。そこまでひどいことはしないのでは?

もやっぱり正しかったと。自分の中では、細かい部分はまだ理解が及んでないものの、直感的には実際の回路とかなりの部分対応したので、かなりスッキリしました


ていうか、ちゃんとテキスト読んどけって話ですね*2(笑)でも、一応一度は目を通したけど、最初は何のこっちゃわからんかったからなー。小難しくてもtechnicalな説明の方が、時に理解が早いってことですね。はい。

*1:より正確には、Bell-costateはピンク上三角であり、量子テレポーテーションにおける観測器は緑上三角にあたる、はず。

*2:ちなみに、ここは勉強会では未学習なところでした。

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