まー、何ていうかですね。
僕、エンジニアなんで、基本このブログは技術系の話メインで書きたいんです。
ですし、この話はちょいポリティカルな話でもあるんで、余計に書きづらいのもあるんですが。
ただまぁ状況的に、書かざるを得まい。裁量労働に関して、ここ数日の世間の状況はあまりに無残だと思ったので。
とりあえず、以下にちょいちょい、ここ数日の顛末と、あと僕の言いたいことを、ツイートの紹介を交えてまとめていきます。
はじめに
27日朝に、以下のツイートをしたら、ものすごい勢いでバズりました。
もうさー、裁量労働がダメなんじゃなくて、いい加減な働かせ方をする雇用者がダメなんだっていい加減気付こうよ。ブラック企業では裁量労働だろうがフレックスだろうが変わらず過労死する人はするって。
— takeo (@bonotake) 2018年2月26日
労基法違反を厳罰化するほうが先。過労死1人で罰金50万にしかならないの、おかしいでしょ。
約2日で2万RT。いやぁ、そんなすごいこと書いたつもりなかったんですけども。
「裁量労働制」にみんな関心が高かったのと、あと、「過労死1人で罰金50万」を知らない人が想像以上に多かったんでしょう*1。
あ、この数字の根拠はもちろん、コレです。
で結局、裁量労働制の話は、安倍首相による「撤回」で幕引き、と、とりあえず相成ったようで。
ただねぇ(ここからが本題)、正直これ、意味あったんですかね?
てかさんざん与党を攻撃してた野党の皆さん、あと(何故か学生団体が主催で)デモまでやって、反「定額働かせ放題」キャンペーンを繰り広げた市民の皆さん。
それに乗っかるマスコミの方々。
本当に、「裁量労働制」って理解してます?
今回の国会で審議されてた内容、本当に理解してました?
ニュースでは世論調査で過半数が反対とか出てましたけど。
ただ、僕は首相による撤回指示のニュースが出た後の3/1朝、裁量労働制に関するアンケートをTwitterで作成しました。
結果は下記の通り。
この472票が統計的にどれだけ意味があるかは知りませんけど、まぁ少なくない数のうちの7割弱は今国会で審議してた内容を正確に把握してなかったです。今回国会の審議対象になっていた裁量労働制について…
— takeo (@bonotake) 2018年2月28日
これで、世論の過半数が反対、と言われてもね。どれだけの意味があるんでしょう。
こんな状態で国会の審議をしていたの、与野党・マスコミともども問題あるんじゃないですかね。
僕の印象を言わせてもらえば、国民がきちんと理解しないまま、いやむしろ変な誤解を与えたまま、野党による裁量労働制へのネガティブキャンペーンで終わった気がします。
はっきりいいまして、迷惑です。今後、裁量労働制は国会で一切審議できないのでは、という気にすらなります。
自分の立場を明らかにしておく
僕は前職、コンピュータ関係の研究職でした。なので、のべ15年以上、裁量労働制で働いていました。(研究開発職は専門型裁量労働制の対象)
周囲の知人・友人も、裁量労働で働いている研究者やITエンジニアが結構多いです。(SEも専門型裁量労働制の対象)
彼らは(聞いてる限り)裁量労働制に対して非常に好意的。というか、もう裁量労働以外では働きたくないという人がほとんどです。
僕も、今は定時勤務の月給制*2ですが、人事は将来的に裁量労働制を敷きたいと言っているし、僕もぜひ裁量労働制で働きたい。
そんな状況なので、今回の国会での顛末を見ていて皆が口を揃えて言ったのが「こんな流れで裁量労働制がなくなったら困る」でした。
裁量労働のメリット
経営者側からみたメリットなんぞ知りません。あくまで僕の視点で、働く側、労働者側からのメリットを書いておきます。
それは、場所と時間に拘束されないということに尽きるのでは、と思います。
基本、何時に職場に来て、何時に帰る、ということを考える必要がなくなるので。
まぁ会議とかあれば別ですが、それもSkypeかなんかでテレコンやれば済むかもですし。
そして、仕事に対する姿勢や考え方ががらっと変わります。
時間給だと、当然、勤務時間以外で仕事なんて、したくないですよね。お金出ないんだもの。
でも裁量労働制の場合、たとえば家で仕事するのが平気になります。
それってサビ残じゃないの? と思われるかも、ですが。まぁ見方によってはそうですが、一方で疲れたと思ったら平日昼間に休養取ってもいいので、差し引きゼロです。
むしろ自分の働きたいときに働きたいところで働けるので、単なる定時勤務+サビ残よりは遥かに楽で身体にもメンタルにも優しいです。
もちろん、家でなんか働きたくない、という人もいるでしょうし、そしたら職場で働けばいいだけです。
同じ仕事を長い時間かけてやっても意味ないので、さっさと済ませて帰ればいいのです。
こうして、自己の労働の単位が、働く時間の長さという「量」から、何をやるかという「質」に変貌します。どう働くかはその人次第。
この辺は、以下の記事でも書いています。
フレックスだと代替できないのか
僕は一時期フルフレックス(コアなしフレックス)でも働いてましたけど、やっぱり、裁量労働制とは違います。
たとえば、家庭を持つお母さんが、子供の送り迎えで週3日を2時間短く働いたとしましょう。
この場合、残り週2日は3時間余計に働かないといけません。デフォルト8時間勤務なら、1日11時間。これって、結構キツイと思いません?
でも裁量労働なら、こんなこと気にする必要ありません。きちんと成果さえ出せば、毎日でも子供の送り迎えができます。
結局フレックスだと、労働時間という「量」から逃れられないので、感覚が全然違うんです。
まぁ、フルフレックス+テレワーク+無限の時間単位有休、なら代替できるかもしれません。
裁量労働は「定額働かせ放題」にならないのか
一方で、まぁ僕の周辺にはいませんが、Twitterなど覗いていると、やっぱり裁量労働制で働いて、相当不満を持った人もいるようです。
安倍首相の国会答弁によると、「現在裁量労働で働いている人のおよそ2/3は満足している」とのことで、残り1/3は不満ということに。
僕が先程書いたメリットは、明らかに「仕事に対する個人の裁量」と「受け持つタスクの量」に強く依存します。
で、ブラックな企業が「個人に裁量を与えず」「過剰なタスクを個人に与える」ようなことをすれば、ひたすら悲惨なことに当然なってしまいます。
こうなると、確かに「定額働かせ放題」です。
まとめると
結局、裁量労働は↓
— takeo (@bonotake) 2018年2月26日
1. きちんと運用できれば労働者にもすごくメリットのある制度
2. 一方で、ブラック企業が悪用すればサビ残が合法化されるだけ
3. 悪用をふせぐ有効な手立てが今のところあまりない
現在野党やマスコミは2ばっかり強調するが、1には触れないし、本当にいちばん大事なのは3。
こうなります。
ただし、「有効な手立てがない」とは書きましたが、まったくない訳ではありません。
それは、特に今回の国会で審議された企画型裁量労働制に関しては、適用に際して労働者本人の同意が必要*3、ということです。
そして同意を拒否した労働者に対して、使用者が不利益を講じてはならないことも労基法に定められてます(つまりは強制不可)*4。
だから、嫌なら拒否すればいいだけのことなのです。基本は。
そもそも、会社側が勤務時間の指示をしてはいけないことも労基法にあります*5し、要は「本人の意志に反して裁量労働を強制する」とか「個人に裁量を与えない」とかは全部労基法違反なんです。
ちなみに専門型裁量労働制に関しても、労組なり労働者代表なりが拒否すればいいだけなんで。
だから、こう↓
裁量労働制の悪質運用がある場合は、従業員代表(又は労組)が労使協定の更新時に裁量労働制を拒否すれば終わり。さらに「参加必須の朝礼がある」とか明確な違反を証明できれば裁量労働制無効で過去2年分の残業代請求できると思うんですが、何故これらが「有効な手立て」にならないのでしょうか…。 https://t.co/tfI5omM4C5
— 鬼頭雅英 (@kito_mas) 2018年3月1日
なので、今の国会で審議されてた話にしても、裁量労働制が悪いんではなく、労基法を踏み倒して平気な雇用者がいることが問題なんです。
だから、最初に貼り付けた、このツイートにつながるんです。
もうさー、裁量労働がダメなんじゃなくて、いい加減な働かせ方をする雇用者がダメなんだっていい加減気付こうよ。ブラック企業では裁量労働だろうがフレックスだろうが変わらず過労死する人はするって。
— takeo (@bonotake) 2018年2月26日
労基法違反を厳罰化するほうが先。過労死1人で罰金50万にしかならないの、おかしいでしょ。
結局、労基法を厳罰化するなりして、日本にはびこる、労働者から搾取して平気な雇用者どもの意識を変革する必要があるんです。
裁量労働制かどうかは本質じゃないんです。
なので、どうか野党の皆さん。裁量労働制を悪者にしないでください。腐った日本のブラック経営者を悪者にしてください。
とはいえ
裁量労働制は、「欧米っぽい働き方を目指すための大事な価値観のインストール」をすることが大事なのに、それをびびって放棄してしまった印象が強い。 https://t.co/8zde2GD58e
— hiro (@hiro) 2018年3月1日
裁量労働制って「すでに国民の七割が(低賃金労働者搾取という)麻薬に汚染されている『経営者の国』で、ヒロポンを(ナルコプレシーの治療薬として有用なので)きちんと運用できればメリットがある』と言って、現在の「処方薬」から「指定医薬部外品」に変更します、って言ってる様に見えますが……? https://t.co/9f15UwlNPZ
— 国立科学研究所 (@Kunitachi_Lab) 2018年3月1日
確かに、麻薬撲滅前の今の日本にヒロポン持ち込むのは、時期尚早かも、とは、思ってしまいます。
ただ、短期的なデメリットばかりを見てメリットある制度を捨ててしまうのは、本当に、もったいないんです。